ENGINEERS' COLUMN
vol.5
公開日:2026/01/19
Blast‑RADIUS脆弱性対応に伴うFortiGateのRADIUSクライアント仕様変更とその影響
- セキュリティ
- 運用
はじめに
FortiGateは、Fortinetが提供する次世代ファイアウォール(NGFW)であり、ネットワークの境界防御や脅威対策を担うセキュリティ製品として、さまざまな企業・組織で利用されています。CTCテクノロジー株式会社では、FortiGateをはじめとするFortinet製品の保守サポートサービスを提供しています。
背景
FortiOS 7.2.10/7.4.5/7.6.1以降では、Blast RADIUS脆弱性(CVE-2024-3596)への対策として、FortiGateがRADIUSクライアントとして動作する際の仕様が変更されました。この変更に伴い、バージョンアップ後にRADIUS認証が失敗する事象について、複数のお問い合わせをいただいています。
本記事では、RADIUSおよびその標準仕様におけるMessage-Authenticator属性の役割を説明したうえで、FortiOSにおける仕様変更の内容とその影響について解説します。
用語整理
RADIUS
認証(Authentication)、認可(Authorization)、記録(Accounting)を行うためのプロトコルです。
EAP
認証プロトコルの一種で、EAP-TLS、EAP-TTLS、EAP-PEAPなどの方式があります。主にIPsec IKEv2、802.1X(有線/無線)で利用されます。
一方、EAPを用いない方式として、PAP、CHAP、MS-CHAPなどのユーザ名/パスワードを用いる方式があります。これらは主にIPsec IKEv1(XAuth)、SSL-VPN、ファイアウォールのユーザ認証などで利用されます。
RADSEC(RADIUS over TLS)
RADIUS通信自体をTLSで暗号化する仕組みです。EAP-TLSとは異なる技術です。
Message-Authenticator属性
RFC 2869では、EAPメッセージを含むRADIUS通信において、パケット全体の整合性を検証する仕組みとして、Message-Authenticator(属性番号80)が定義されています。また、RFC 3579では、EAPメッセージを含むRADIUSパケットには本属性の付与を必須と規定しています。
FortiOS仕様変更の概要と影響
本仕様変更はFortiGateをRADIUSクライアントとして利用し、非EAP認証を実装している環境に影響します。
非EAP認証
仕様変更前は、非EAP認証において、FortiGateから送信されるAccess-RequestにMessage-Authenticator属性は付与されていませんでした。仕様変更後は、Blast-RADIUSへの対策として、非EAP認証においても常にMessage-Authenticator属性が付与されるようになりました。その結果、RADIUSサーバからの応答パケットにMessage-Authenticator属性が含まれていない場合、FortiGateはその応答を不正と判断し、認証は失敗します。
EAP認証
EAP認証では、従来からAccess-RequestにMessage-Authenticator属性が付与されています。そのため、本仕様変更による影響はありません。
RADSEC
RADSECでは通信全体をTLSで保護するため、Message-Authenticator属性の検証は必須ではありません。そのため、仕様変更による影響はありません。
なお、FortiGateではFortiOS 7.4.0以降でRADSECをサポートしています。
動作検証
RADIUSサーバ側の設定(require_message_authenticator)を変更し、EAP認証および非EAP認証における挙動を検証しました。
require_message_authenticatorの意味
- 本設定値が「yes」の場合:
RADIUSクライアントが送信するAccess-RequestにMessage-Authenticator属性が付与されていない場合、サーバは応答しません。 - 本設定値が「no」の場合:
属性が付与されていない場合でも、サーバは認証処理を継続します。
検証環境と確認方法
| RADIUSサーバ | FreeRADIUS(Message-Authenticator属性の付与をサポート) |
|---|---|
| RADIUSクライアント | FortiGate 60F/FortiOS 7.2(7.2.9、 7.2.10、7.2.11) |
| 検証方法 |
|
| 確認点 |
|
検証結果
1)EAP認証
すべてのFortiOSバージョンにおいて、require_message_authenticatorの設定値に関わらず認証は成功しました。また、いずれのバージョンでも、FortiGateが送信したAccess-RequestにMessage-Authenticator属性が付与されていることをパケットキャプチャで確認しています。
2)非EAP認証
非EAP認証では、FortiOSのバージョンおよびrequire_message_authenticatorの設定値によって動作が異なりました。
FortiOS 7.2.9
require_message_authenticatorの設定値が「yes」の場合、認証は失敗しました。
このとき、FortiGateが送信したAccess-RequestにはMessage-Authenticator属性が付与されていないことを、パケットキャプチャで確認しています。
FortiOS 7.2.10
require_message_authenticatorの設定値が「yes」の場合、GUIでの認証テストのみ認証が失敗し、CLIからの認証テストは成功しました。これは、FortiOS 7.2.10の既知不具合(BugID:1075627)によるもので、FortiOS 7.2.11で修正されています。
CLIの認証テストでは、FortiGateが送信したAccess-RequestにMessage-Authenticator属性が付与されていましたが、GUIの認証テストでは付与されていないことをパケットキャプチャで確認しています。
FortiOS 7.2.11
require_message_authenticatorの設定値に関わらず、認証は成功しました。
CLIおよびGUIのいずれのテストでも、FortiGateが送信したAccess-RequestにMessage-Authenticator属性が付与されていることをパケットキャプチャで確認しています。
3)まとめ
検証結果を表にまとめます。
| FortiOS | RADIUSサーバ側の require_message_authenticator 設定 |
非EAP認証 (GUIでの認証テスト) |
非EAP認証 (CLIでの認証テスト) |
EAP認証 (IPsec IKEv2) |
|---|---|---|---|---|
| 7.2.9 | no | 認証成功 | 認証成功 | 認証成功 |
| yes | 認証失敗 | 認証失敗 | 認証成功 | |
| 7.2.10 | no | 認証成功 | 認証成功 | 認証成功 |
| yes | 認証失敗※1 | 認証成功 | 認証成功 | |
| 7.2.11 | no | 認証成功 | 認証成功 | 認証成功 |
| yes | 認証成功 | 認証成功 | 認証成功 |
※1BugID:1075627の影響によるものです。
さいごに
RADIUSサーバがMessage-Authenticator属性の送信に対応している場合、本仕様変更による影響はありません。一方、非EAP認証を利用し、かつRADIUSサーバが当該属性に対応していない環境では、FortiOSのバージョンアップ後にRADIUS認証が失敗する可能性があります。 非EAP認証を利用している環境において、FortiOS 7.2.10/7.4.5/7.6.1以降を適用する際は、事前にRADIUSサーバ側の仕様を確認することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
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